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Naohiko Ono

2023年3月期はどのような1年でしたか

 2023年3月期は、カメラ事業が引き続き堅調であったものの、時計相場の急激な下落に伴い、当社も第3四半期に業績予想、配当予定を下方修正せざるを得ないという結果となりました。経営一同、このことを大変重く受け止めており、弊社を代表しまして株主の皆様に深くお詫びを申し上げます。

 2023年3月期の時計価格相場は、歴史的な高値に始まったのち、各国の金融政策に端を発したインフレ進行や景気減速、暗号資産の急落、株価変動等の影響を大きく受けることとなりました。このため、以前は希少でありました中古時計が流通市場に大幅に供給されたことにより、需給のバランスが崩れ、急激な価格の押し下げ原因となりました。
私どもとしては、クリスマス商戦等を見据えた在庫の拡充に動きましたが、時計価格相場は見込み通りには回復せず、期末には棚卸商品評価損を計上、セグメント赤字に至りました。 本年1月以降は、在庫水準の削減と財務基盤の一層の強化を行っており、2024年3月期に影響を持ち越すことなく、新しいスタートを切ることができております。

 カメラ事業では、お客様の購買・閲覧履歴をもとに、おすすめのStockShot記事等をLINE等でプッシュ配信できる「AIコンテンツレコメンド」の効果が現れ、過去最高の売上高とセグメント利益を達成しました。また、eBay Japan Awards 2022で『Map Camera』が最優秀賞のSeller of the Yearを受賞するなど、グローバル市場の獲得も、徐々にではありますが進みつつあります。 これらの結果、2023年3月期の当社は、過去最高の売上高を達成でき、営業利益、当期純利益につきましても、本年2月7日に発表した修正計画を上回って終えております。

2024年3月期の業績予想について教えてください。

 2024年3月期は、売上高500億円、営業利益31億円、当期純利益21億円を計画しております。当事業年度は、YouTube、LINEをはじめとするお客様とのタッチポイントの充実、AI・ビッグデータ活用による販売・買取価格や在庫水準の適正化など、DX/IT戦略を更に高度化させ、利益創出の基盤を盤石なものとしてまいります。

 カメラ事業では、既にAIを活用し、中古カメラの買取・販売価格をタイムリーに自動設定する「AIMD」、お客様のご興味に合わせた記事配信を行う「AIコンテンツレコメンド」等、DXを中核とした仕組み化ができております。AIが、需要や嗜好の変化に対応し続けられるよう、学習とチューニングを継続して行うことで、引き続き堅調な売上高・利益を獲得できると見込んでおります。 加えて、YouTubeやLINEなど、コンテンツの拡充や、チャネルにおけるタッチポイントの改善も行うことで、マーケティングに更なる磨きをかけてまいります。これらの取組は特にEC上で行いますので、カメラ事業のEC売上高を前期比116%とする目標を立てております。

 時計事業は、時計価格相場の騰落に関わらず安定的な利益を生み出すための仕組み化を進めることで、昨年度の課題克服を図ります。仕入時の査定や業務ルーティーン等を聖域なく点検し、過去の仕入データ、価格相場のデータ等の活用も模索します。 構造改革の中でも、売上高、営業利益を着実につくり、中長期的な飛躍のための礎を築いてまいります。

中期経営計画を発表されましたが、どのような内容でしょうか?

 2026年3月期に売上高631億円、営業利益48億円、当期純利益33億円を目指す中期経営計画としております。2024年度以降も、カメラ事業は堅調に2桁増収を維持しつつ、時計事業、筆記具事業、自転車事業のEC売上高を、年率20%成長とすることで、計画達成を目指します。

 今回策定した中期経営計画では、AI活用を含む事業強化を継続してまいります。カメラ事業においては、AIMDの強化による、仕入競争力強化と売上総利益率向上の両立を図るほか、フルサイズミラーレスカメラをはじめとする「価値ある新品と中古品」の需要を一層取り込めるリコメンド、マーケティングを実施します。高い粗利率を維持しつつ、中古高級市場におけるシェア拡大を盤石としてまいります。

 時計事業は年15%成長にて売上高150億円の到達を掲げました。高級腕時計の市場は、グローバルでは4.4兆円、年9.8%で市場成長するとされております。我が国の輸入腕時計市場は、2022年度は7,381億円と、前年比26%の大幅な伸びを記録しました(※)。 また、高級腕時計は、真贋性、専門性、情報の正確性などが高く求められる市場です。このことは、当社が掲げる行動規範「本物であること」や「4つのシンカ」の発揮が強く求められる市場ということでもあります。

 市場規模やケイパビリティの観点から、時計事業は当社において大変有望なものです。この事業をカメラ事業に続く利益の柱に育てていくという方針・決意は、揺らぐことはございません。この中期経営計画期間に、時計価格相場の動向に影響を受けにくく、在庫と販売の効率化に向けた仕組みを構築してまいります。

 今般の中期経営計画では、営業利益率を2023年3月期の5.4%から、3年間で7.6%まで高めるという、構造改革を伴うものとしております。当社のEC事業におけるバリューチェーンには、在庫管理、出荷物流をはじめとするオペレーションに改善の余地があります。
カメラ、時計の販売は、利益を落とすことなくECシェアを一層拡大すべく、AI、ビッグデータの更なる活用を行い、本社業務も一層の自動化を図ることができると考えております。

 振り返れば、私どもが模索してきたAI、データ活用のここ数年の取組は、昨今話題となっている「マーケティング5.0」そのものだったように思います。私どもはこれまで以上に、価値ある新品と中古品をお客様にどうお届けするかを突き詰め、常に時代の先端を切り拓く先駆者であり、お客様と株主様に最大の貢献を模索してまいります。

※ Luxury Watch Global Market Report 2023(The Business Research Company) 1米ドル=130円として換算 2022年1~12月 日本の時計市場規模(推定)(一般社団法人日本時計協会)

業績ハイライト

業績ハイライト

シュッピン ビジネスの強み

シュッピンは、EC企業で、カメラを主軸としたビジネスを展開しています。 時計市場の急落など、不測の事態が起きても、底堅く利益を獲得できる仕組みがあります。

1ビジネスモデル:高利益体質で、不測の事態からの回復が早い

●1事業1店舗を超えた店舗展開をしないため、費用のほとんどは変動費で、固定比率が小さくなっております。

●EC売上高が成長すると、固定費をほぼ増やさずに、大きな利益を獲得することができます。

●店舗投資が不要であるため、販売が伸び悩んだとしても、赤字になりにくいビジネスモデルです。

  •  ⇒出店の失敗等により、赤字店舗を何年も抱え続けるようなことはありません。
  •  ⇒在庫水準が一時的に高くなっても、仕入の抑制や値下げ販売等によって、 短期間で在庫の圧縮や刷新ができます。
シュッピン・ビジネスの強み

2仕組み化の強み:買取・販売やマーケティングでAI・データを活用

  • ●中古品の買取・販売で、価格決定は高いノウハウが必要です。 シュッピンは、カメラ事業でAIが買取・販売価格を自動設定することができています。
  • ●カメラ、時計をはじめとする「価値ある新品と中古品」のマーケティングは、One to Oneであってこそ高い効果をもたらします。 シュッピンのマーケティングは、お客様自らが登録された「ほしいものリスト」等の情報に基づいて、AIがコンテンツを選ぶ仕組みを築いています。
  • ●「バリューチェーン・シナリオプランニング」のビジョンを今後も浸透させ、徹底した仕組み化を推進していきます。
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